「わたしを離さないで」
内容に興味を持って見る事にした
風の強かった昨日、封切日とは知らずに行った
同時に上映している英国王のスピーチもあって
日比谷シャンテには沢山の人が並んでいた
TOHO CINEMASのHP掲載のストーリ説明
小さい頃から一緒だった。田園地帯に佇む寄宿学校ヘールシャムで絵や詩の創作に励んだ日々。しかし外界から完全に隔絶されたこの施設には幾つもの謎があり、キャシーたちは普通の人たちとは違う〈特別な存在〉としてこの世に生を受けたのだった
このストーリ説明の
普通の人たちとは違う〈特別な存在〉と
してこの世に生を受けたのだった
に引かれたのがきっかけでしたが・・・
何の為の「生」か
誰の為の「生」か
completion=死
考えさせる映画であった
沖縄で上映があるかわからないが
見てよかった
原作への書評です
[評者]茂木健一郎(脳科学者)
「事態の全貌が明らかになった時、読者は血も凍るような恐怖感を覚えることになる。魂の奥底にまで届くような衝撃がある」。
[評者]小池昌代(詩人)
英国にある、施設・ヘールシャム。幼少時から共に育ってきた生徒たちが、数人の教師と暮らしている。全寮制の学校かと思いきや、描かれる空気には微妙な違和感がある。
まず彼らには家族が見あたらない。孤児かというと、そういうわけでもなく、その「存在」の感触に、言葉では、説明しにくい不可解さが漂う。望めばいつの日か、好きな人と暮らす程度の可能性はありそうだが、どうやら子供は産めないらしい。そんなことってあるだろうか? わたしたちが普通に使うような意味での、「将来」とか「未来」あるいは「可能性」などという言葉が、彼らにはどうも、うまくフィットしないのだ。
若者たちは施設にいるあいだ、仲間たちと密接な関係を育み、詩をつくり絵を描く、一見幸福そうな日々を送る。だが施設を出たあとは、「介護人」あるいは「提供者」となって、孤独な生活を強いられるようになる。誰を介護するのか、何を提供するのか。すべては明確に説明されぬまま、作品は注意深くミステリアスに進む……。
著者、カズオ・イシグロは日本人として生を受け、幼い頃に英国に渡った。厳密な意味で母語でない英語で書く作家である。不条理な世界に取り残されたような人間(それは私たちのことに他ならないと思うが)が、多くの作品に登場し、彼らの魅惑的な語りを通して、いくつもの豊穣(ほうじょう)な物語を生み出してきた。
本書では、穏やかな知性と豊かな感受性を持つキャシーという女性が語り手である。彼女もまた、あの施設で育ち、今は「介護人」として働いている。彼女の繊細で音楽的な語りは、読み進めるにしたがって、ああこの人は信じられるという不思議な友情を読者に感じさせる。ヘールシャムでの膨大な過去をゆさぶりながら、人が確かに生きたという証を丁寧に紡ぎだしていくその手つきは、母のように懐かしく慈悲があり、証人のようにおごそかだ。
その語りによって真実は、薄皮をはがすようにあきらかになっていくが、それでも最後まで、あれはいったい、どういうことだったのだろうと、謎のままに残される細部もある。しかしその謎は解明されずに残されるからこそ、まぎれもない生の温(ぬく)もりを持って記憶の底でいつまでもうごめく。
わたしたちは、何かの目的のために生まれるわけではない。生まれるために生まれ、生きるために生きる。なぜ、生きていくのか、わからないままに、先の見えない暗闇を進んでいく。ある目的のもとに生を受け、役割をはたして死ぬ彼らは、その点で私たちとまったく異なってみえる。だが、どんな圧力が彼らの生を限定し未来を縛ろうとも、命それ自体は、目的など無効にして、ただ生きようとするのだ。生きるために。その矛盾と拮抗(きっこう)がこの小説に、深く大きな悲哀をもたらしている。
「複製」の概念が「命」の本質を押しつぶそうとする戦慄(せんりつ)の小説である。まだ誰もこのことを経験したことがない。でも知っていたという既視感がある。そこが真に恐ろしい。
[評者] ファミリーアフェア "横断歩道"
どこかミステリアスに描かれていて、読むに連れてこの小説の中の世界が段々と見えてくるようになっています。
それは私達の住む世界と異なる世界ですが、同時にその世界は私達の世界に重ねられるべきものであり、登場人物達は私達と同じなんだと思いました。SF的でありながらも、登場人物達の姿は何よりも現実感を持って訴えかけてきます。そこから私達の何気ない日常に繋がるメッセージが透けて見えるような気がしました。これは登場人物達が、(極端に言えば私達と同じように)限られていて、抜け出せない現実があり、でもその中に何かを見出そうとしているからこそではないでしょうか。
そしてこの小説を支えるひとつに文章の良さあると思います。描写や洞察力も素晴らしいのです。その繊細かつ静かな語り口で綴られるエピソード群は、確かな生を感じる事ができ、引き込まれます。特にラストシーンにかけてのそれは本当に、本当に痛切なるもので、思わず言葉を失ってしまいました。心の一番奥で渦巻くような気持ちです。大袈裟ではなく、読み終わってもずっと胸がヒリヒリしたまま、何も出来ないでいたほどでした。
今思い出しても、自分が何かを感じてるのがよくわかります。凄く「残る」作品です。
読んでよかったです。
出来れば、映画を見て読んで欲しいですのですが・・・
この↓ブログにこの映画の核心部分が記載されています
http://ameblo.jp/lina20/entry-10335258989.html